短編物語 ~ワサビの待ち人~
撮影#奇人のぼっち庵より
「いったいどこへ行ったんだ」
ワサビは目から落ちる涙を指で拭う。
「君の席はいつだって用意している」
だから早く帰ってきてほしいーーーーー
「僕は待っている」
落ち着いたワサビの目から涙はもう流れなかった。
「だって君は…」
そう、君は…
「何やってるのかねワサビ君ひとんちで」
「それはワインだいちご。私はこっち。待ち人を待ってるのさ」
(ワープしおった…しかもかっこいいポーズをきめている…)
「例の妄想ごっこかい」
含み笑いをするいちご。
ワサビは両手を広げてはっはっはと笑った。
「妄想なんかじゃない!あの時私は彼女と誓ったんだ」
「ほう」
「悪人面エレの会、会長と副会長になろうと…!!!」
いちごは唖然とした。
「たぶんそれ」
「参加してないよ」
「………だって一緒に食事してやろうって言ったら、にこって」
「それ『ぶっとばすわよ』のにこだよ」
ワサビは遠い目をしながらそれでも待っていた。
あのにこが賛同のにこであると信じて。
(信じなきゃやってられない…ぶっとばされてしまう…ガクガク)
おわり。